障害者防災マニュアル

はじめに

 大規模な災害が発生した場合、障害をお持ちの方々の多くは情報入手や自力での避難が困難なため、大きな被害を受けたり、犠牲者になる可能性が高くなることが想定されます。この防災マニュアルは、障害をお持ちの方々に災害発生時に取る行動について理解をしていただくとともに、県民に対して関心を高めていただくことを目的に作成しました。
 障害種別ごとに当事者が活用できるように作成しておりますが、障害の種別や程度によっては、必ずしも本人がマニュアルを参考にして準備や行動が出来るとは限りません。バックアップが必要となる方々も大勢いらっしゃいますので、家族や地域の方々のご支援、ご協力をお願い申し上げます。なお、障害種別ごとに支援する方々に参考としていただきますよう、簡単な項目も掲載いたしましたのでご覧ください。
 また、県民の皆様方全てに配布できませんので、必要な方々に対して関係する部分を複写して配布していただきたいこと、更に市町村や施設などにおいては、それぞれの地域の実情に基づいたマニュアルを作成するための参考にしていただければ幸いです。
 終わりに、このマニュアルの作成にあたって、ご意見やご助言をいただきました関係者の皆様に対し、心から感謝申し上げます。

平成18年10月

秋田県

Ⅰ 地震の知識

1 地震発生のメカニズムについて

(1)どうして地震が起きるのか
 地球の表面は、厚さ10㎞から200㎞のプレート(層)に覆われています。このプレートは10数枚のブロックに分割されていて、日本付近は4枚のプレートの境界に位置し、プレート同士が押し合ったりする力が働き地震を引き起こします。
 また火山国の日本では、火山活動による地震も多いのが特徴です。

(2)地震の種類としくみ
 地震を起こった場所でみると、「海溝型の地震(プレートの境界付近で起こる地震)」、「活断層による地震(陸地の浅い場所で起こる地震)」、「火山活動による地震」などのタイプに分類されます。

①海溝型の地震
 海溝型の地震は、日本列島が乗っている大陸側のプレートに海洋側のプレートが毎年数センチずつ移動しながらもぐり込んでいます。その時に大陸側のプレートが引きずり込まれ、プレート同士の境界にゆがみが溜まります。このゆがみが限界に達したとき、元に戻ろうとして急激に動き、地震が発生します。海底で地震が起こり、それに伴う海底の上下運動により津波が発生します。日本は、世界の中でも珍しいほどプレートが集まっているプレートの交差点のような場所のため、大地震や津波が起きやすい世界有数の地震大国です。

②活断層による地震
 活断層による地震は、プレートに蓄積されたゆがみのエネルギーが、プレート内部で破壊を引き起こし、断層ができて地震が発生します。死者6,433人という大惨事となった、阪神・淡路大震災や平成15年7月の宮城県北部を襲った直下型の内陸地震のほとんどがこのタイプです。日本には、活断層が約2,000箇所あり、秋田県内にも約43あるといわれています。

③火山活動による地震
 日本は火山帯がいくつもある火山国のため、火山活動によっておこるさまざまな地震活動があります。たとえば火山が噴火した時だけでなく、地中のマグマや火山ガスの変化にともなう火山性地震や火山性微動なども地震活動のひとつです。

2 地震がもたらす被害

(1)過去の被害の概要
 昭和58年5月26日11時59分、秋田・青森県境沖約百㎞を震源地として、秋田市で震度5を記録する強い地震が発生しました。これが日本海中部地震です。震源の深さは16㎞で、この時点で日本海で発生した地震としては最大級のマグニチュード7.7を記録しました。この地震により、秋田県内では沿岸部を中心に83名の死者や265名の負傷者が出たほか、住宅の全壊・半壊、道路の亀裂・決壊などの公共施設、農業施設、文教施設等にも大きな被害が発生し、電気、ガス、水道の供給停止、鉄道の不通、交通混雑、電話の一時不通など、ライフラインにも重大な被害が発生しました。特に、能代港の工事現場で作業していた人や、男鹿市の加茂青砂海岸に遠足に来ていた児童、男鹿観光に来ていた外国人女性など、県内での死者83名のうち、実に79名が地震直後に発生した大津波によるものでした。
 また、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災では、6万5千人あまりの犠牲者が出て、その中には多くの障害者が含まれていました。

(2)避難所での生活
 阪神・淡路大震災では約24万棟の住宅が全半壊しました。災害によって住宅を失った人や、電気や水道、ガスなどが止まり自宅で生活できない人たちのために、避難所や仮設住宅が提供されました。阪神・淡路大震災では、最も多い時には約32万人の人が1,000箇所以上の避難所で不自由な生活をしました。
 また、約4万8千戸の仮設住宅が建設され、延べ5万4千人の入居者が利用しました。

Ⅱ 地震に対する日頃の備え

1 住まいの地震対策

 大規模な地震が起きると、新耐震基準が制定された昭和56年以前に建築された住宅に多くの被害が出ると言われています。このため、昭和56年以前に建築された建物については、不安であれば耐震診断を行い、危険と診断された場合は、補強工事などの対策を行う必要があります。
 また、建物だけでなく、門柱やブロック塀などの耐震性も点検するようにします。
 家の中の主な安全対策は、次のとおりです。

・大きな家具は、天井との間を耐震金具やL字型金具でしっかり固定します。

・タンスなど、高いところに重いものは置かないようにします。

・冷蔵庫は、背面にあるネジや金具を利用して壁などに固定します。

・プロパンガスボンベは、安定したものの上に置き、クサリなどでしばっておきます。

・割れたガラスでケガをしないように、ガラスに飛散防止フィルムを貼ります。

2 地域とのネットワークづくり

 災害時に障害者が安全な場所に避難するには、地域の方々の協力が必要不可欠です。そのためには、地域の人たちと顔なじみになったり、障害を理解してもらうなど、普段から交流を深めておき、災害時にも遠慮なく援助してもらえるような関係をつくっておくことが大切です。
 また、町内の自主防災組織のリーダーや民生委員、近隣の人など、特定の人に災害発生時に手助けしてくれるようあらかじめ協力を依頼しておくことが大事です。その際、障害の状況や支援してもらいたいことなどを具体的に伝えておきます。

3 非常持出品の用意

 いざというときは、ただちに避難しなければならないことがあります。こんなときのために、日ごろから、非常持出品をリュックなどに準備しておくことが大切です。非常持出袋には次のようなものを中心に、またそれぞれの障害に応じて必要なものも忘れずに用意します。

・携帯ラジオ
 予備電池を忘れずに。災害時は正確な情報が不可欠です。

・懐中電灯、ロウソク
 予備電池を忘れずに。停電や夜間の行動に必要です。

・ヘルメット、防災頭巾
 避難時の落下物などから頭部を保護します。

・非常用食料
 3日分。火を使わなくても食べられるものが便利です。

・飲料水
 3日分。1人1日3リットルを目安としたいものです。

・衣類
 下着、上着、靴下、ハンカチ、タオルなど。携帯用衣類セットなどもあります。

・生活用品
 ライター、マッチ、軍手、紙皿、紙コップ、ナイフ、缶切り、栓抜き、ティッシュ、ウエットティッシュ、ビニールシートなど

・救急薬品、常備薬
 絆創膏、ガーゼ、包帯、消毒薬、解熱剤、胃腸薬、風邪薬、マスク、目薬など。持病のある人は常備薬を忘れないようにします。

・通帳、証書、印鑑、現金
 現金は紙幣だけでなく硬貨も用意します。

・身分証明書、学生証、障害者手帳、健康保険証、防災カードなど

4 防災訓練への参加

 地域や職場などの防災訓練には出来る限り参加し、避難場所や避難方法を確認しておきます。訓練に参加することで、地域の人たちとのコミュニケーションを深めることもできます。
 また、家族でも防災訓練を行うと、いざというときに慌てず行動できます。家族で災害時の連絡方法や避難の仕方、役割分担などを決めておくことが大切です。

5 防災カードの作成

 災害が発生した場合は、防災機関等を含む多くの人が被災する可能性があるため、周囲の人と協力し、自分の身は自分で守るという考え方が必要です。
 災害時には、どのような状況に置かれるか予測がつかないため、障害のある人たちにとって自分で出来ること、出来ないこと、望む援助、必要な支援などを周囲の人たちに的確に伝えるための準備が必要です。
 そのため、防災カード(付録を参照)を事前に作成し、日頃から携帯したり、非常持出袋などに入れておきます。

6 避難経路の確認と避難経路図の作成

 自分の地域にある避難場所や広域避難場所がどこにあるのか、自宅から一番安全な経路はどこなのかなど、実際に歩いて確かめておきます。
 その際、危険な場所として狭い道やブロック塀、避けたほうが望ましい階段や橋、また目標物として交番や消防署、市町村役場、病院などをそれぞれ地図に記載し、避難経路図を作成しておくことが必要です。

Ⅲ 地震発生時の対応

1 共通事項

(1)家の中にいる場合
①まず自分の身の安全を守る。
 大きな揺れが続くのはせいぜい1分ぐらいですので、倒れる恐れがある家具などから離れ、テーブルなどの下にもぐります。このとき、座布団などで頭を保護します。そばに何もない場合は手で頭を覆います。
 家に閉じ込められたり、ケガなどで動けない場合は、決してあきらめずに大声を出したり、物をたたいたり、懐中電灯を点滅させるなど、外の人に自分の居場所を知らせ、助けを求めます。

②逃げ出す場所を確保する。
 ドアなどが変形して部屋の中に閉じこめられないよう揺れの合間をみてドアなどを少し開け、逃げ道をつくっておきます。

③火の始末をする。
 大きな地震のときは、やけどを防ぐため揺れが収まってから行います。ガスは元栓を閉め、電気器具はスイッチだけでなくコンセントも抜きます。ガラスの破片などでケガをする危険があるので、裸足で歩き回らないようにします。

(2)外出中の場合
①道を歩いている場合
 ブロック塀や自動販売機などには近づかないようにします。倒れそうな電柱や垂れ下がった電線に注意します。
 避難場所に移動するときは、狭い道、塀ぎわ、川べりはさけるようにします。

②デパートなどの建物にいる場合
 カバンなどで頭を保護し、ショーウィンドウや商品から離れ、柱や壁際に身を寄せ係員の指示を聞き、落ち着いて行動します。また、避難にエレベーターは絶対に使ってはいけません。炎と煙に巻き込まれないように階段を使って避難します。階段を使用できない方は、係員や周りにいる人などに介助を依頼します。

③鉄道、バスなどを利用している場合
 出入口に人が殺到することが予想されるため、巻き込まれないように注意します。手すりやつり革、座席にしっかりつかまり、姿勢を低くして車内アナウンスや乗務員の指示に従い、単独行動はやめます。途中で止まっても、慌てて車外に飛び出さないようにします。

④車を運転している場合
 ハンドルをしっかり握り、急ブレーキは避け徐々に速度を落として道路脇に停車しエンジンを止めます。
 道路脇に駐車スペースがあればそこに車を入れます。その際は、倒れたり壊れたりするもののそばは避けるようにします。
 ラジオなどで正確な情報を入手します。
 避難は、徒歩が原則です。車から離れる際には、窓をしめ、キーは付けたままにしておきます。(車でしか行動できない場合を除く。)
 止めた車から自力で出られなくなった場合は、クラクションを鳴らすなどして救助を求めます。
 周辺の混乱に巻き込まれる恐れがある場合などは、しばらく乗車したままで周囲の状況を確認する必要があります。停車しているときは、エンジンを切らずに緊急発進しなければならない場合に備えます。

(3)津波から身を守る
 危険を感じたらただちに避難します。海岸を離れ、より高い場所へ逃げ、揺れが小さくても決して油断しないようにします。警報や注意報が解除されるまで海辺に近づかないなど、正しい情報に基づいて行動するようにします。

2 障害に応じた対応

(1)視覚に障害のある人のために
①家の中の物の配置を常に一定にし、家族が配置を変更したときは、すぐに確認しておきます。特に、非常持出袋は必ず確認しておきます。

②災害時の避難経路の設定とその通路の安全を確認しておきます。

③居間、寝室など家の中や玄関付近の整理整頓を心がけます。

④メガネ、白杖、点字板、音声時計や触知式時計を非常持出袋に入れておきます。

⑤糖尿病、緑内障のある人は常備薬を常に持ち出しが出来るようにしておきます。

⑥メガネ、白杖、点字板等が地震で損害を受けたり、なくならないよう、いつも身近で安全な一定の場所に置きます。

⑦ガラスなどが飛散して床が危険になるので、各室にスリッパなどを用意します。

⑧緊急時の連絡先点字メモ、メモ用録音機等、自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。

⑨情報入手手段として、ラジオがすぐに利用できるようにしておくか、カード式携帯ラジオを常に身につけます。予備の電池を十分に備えておきます。

⑩家族が外出し、ひとりの場合、近隣の人に万一の際の協力を依頼しておきます。

支援する方々へ
 避難所などでは、行政からの広報や生活に関する情報は、文字によるものが多いので、必ず何が書いてあるのかを知らせるようにします。

避難所などへの誘導
 視覚に障害のある方は、ふだんの生活ではどこに何があるか頭の中に入っていますが、災害が発生すると町の地図が変わってしまうので、自分で行動することが大変難しくなります。誘導の方法は、白い杖の反対側に立って、腕あるいは肩を持ってもらい、半歩前を歩きます。手や腕は引っ張らないようにします。

(2)聴覚・音声言語に障害のある人のために
①補聴器は常に手元に置きます。

②補聴器及び専用電池は、予備を用意し、非常持出袋に入れておきます。

③防災関係機関からの緊急通報用に、ファックスを設置するとともにロール紙等の予備を用意しておきます。

④ファックスを設置していない方はファックスを持っている人、ファックスのある店をあらかじめ確認しておきます。

⑤災害時に必要な緊急会話カード(依頼カード、連絡カード)を用意し、常に持参します。

⑥家族が外出し、ひとりの場合、近隣の人に万一の際の協力を依頼しておきます。

⑦夜間の睡眠中の情報伝達をどうするか家族や近隣の人達と決めておきます。

⑧携帯電話、PHS、ポケットベル、インターネットなど文字情報でお互いに情報のやりとりができる機器があります。携帯電話、PHS、ポケベルなどは着信が振動でわかりますので、たいへん便利です。

⑨携帯用会話補助装置を使用している人はバッテリーの予備を非常持出袋に入れておきます。笛やブザー等、自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。

⑩筆談に必要なメモや携帯用ホワイトボード、筆記用具を備えておきます。雨天時に使用可能で、何度も繰り返し使用できるものが望ましいでしょう。

支援する方々へ
 避難所などでは、様々な情報が伝えられることが予想されますので、その情報を文字に書いて伝えるようにします。また、なるべく早く避難所などにファックスを備え付けるようにします。ファックスが使えない場合は、聴覚に障害のある人に内容を紙に書いてもらって、電話などで代行して伝えるようにします。

(3)肢体不自由の人のために
①安全な居住空間を確認しておきます。常に整理整頓を心がけ、あまり物を置かないようにします。

②居住スペースは、できるだけ避難のしやすい1階を選びます。

③歩行補助具は、倒壊した家具の下敷きにならないように、常に安全な一定の位置に置き、暗闇になっても分かるようにしておきます。

④家族など、日頃介助している人が外出している時の災害発生に備え、近隣の人などに万一の際の協力や介助を依頼しておきます。

⑤非常持出袋に紙おむつ、携帯用トイレ、ビニールシートなどを用意します。

車いす使用者
①車いすが通れる幅を常に確保しておきます。

②車いすが使用不能になった時のために、それに代わる杖、おぶいひもなどを用意しておきます。

③車いすのタイヤの空気圧は定期的に点検します。

④雨天や寒冷時に備え、車いすでも使用可能なカッパ等を用意します。

電動車いす使用者
①電動車いすのバッテリーは、使用後必ず充電し、室温で保管します。

②補液タイプのバッテリーは、定期的に液量をチェックします。

③車いすに内蔵されていない充電器は、倒壊した家具の下敷きにならないように安全な場所に置きます。

支援する方々へ
 車いすや松葉杖の人が通るためには、最低80cmの幅が必要ですし、車いすが回転するためには直径150cmの幅が必要です。
 避難所に車いすや松葉杖の人がいる場合は、通路を確保するようにします。また、避難所に障害者用トイレがない場合、支障がないかを本人に確認するようにします。

車いすを介護するときの注意
 段差を越える時には押す人の足元にあるバーを踏み、車いすの前輪を上げ、段差に乗せてから後輪を持ち上げ、すすめます。段差を降ろすときは、後ろ向きに後輪からゆっくり降ろします。

(4)心臓・腎臓など内部に障害のある人のために
①日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常持出袋に入れておきます。

②特殊な治療食の備えについては、かかりつけの医療機関に相談しておきます。

③家族にも、医療機関からの指示や緊急時の対処法等をよく説明し、理解しておいてもらいます。

心臓機能障害
 ペースメーカーを装着している方は、機器が故障した時の対応、緊急時の連絡方法などを、かかりつけの医療機関や機器メーカーに相談しておきます。

腎臓機能障害
①通院による透析ができなくなった時に備え、県外の医療機関での透析など、日頃から関係団体や医療機関と災害時の対策を具体的に話し合っておきます。

②かかりつけ以外の医療機関で透析を受ける場合に備えて、自分のドライウェイトやダイアライザーのタイプなどの透析条件を防災カードに記入し、非常持出袋に入れておきます。

③災害時には食事、水、薬の自己管理が重要です。食事と水分を上手にコントロールしておくことで、数日間は生活を続けられます。

④カリウム対策のため、カリメイトやケーキサレイトの予備を持っておきます。

⑤自己連続携帯式腹膜灌流法(CAPD)による透析療法をしている方は、透析液加温器のバッテリーの予備を非常持出袋と同じ場所に常においておきます。また、透析液パックを非常持出袋と同じ場所に常においておきます。

呼吸器機能障害
①在宅酸素療法をされている方は、あらかじめ、かかりつけの医療機関に酸素の必要度などを確認しておくと安心です。

②濃縮酸素の濃縮器や液体酸素のボンベは、火気から離れた場所に保管します。

③酸素チューブの配管は、地震が起きたときに、体にからまないように工夫して配管してもらいます。

④人口呼吸器を装着している方は、ライフラインが寸断された場合に備えて、アンビューバック(蘇生器の一つで、自分で呼吸のできなくなった人に人工呼吸を行うためのゴム製の袋)、バッテリー、手動式吸引機などを用意しておきます。

⑤携帯用酸素ボトルを、非常持出袋に入れておきます。

⑥吸入加湿処理により、呼吸に伴う負担の軽減を図るため、ネブライザーを使用する方はバッテリーの予備を非常持出袋に入れておきます。

ぼうこう又は直腸機能障害
①ストマ装具、洗腸セット(水、ぬれティッシュペーパー、輪ゴム、ビニール袋、はさみ)を非常持出袋に入れておきます。

②ストマ装具のメーカー、販売店の連絡先を防災カードに記入して、非常持出袋に入れておき、家族にも同様の連絡先を知らせておきます。また、処理方法を家族にも教えておきます。

支援する方々へ
 酸素が必要な人、定期的に人工透析が必要な人、人工肛門を使っている人、ペースメーカーを利用している人などは、外見では分かりません。しかし、災害時に医療行為が受けられなくなると生命の危険に直結する人がいます。また、体力がないため、避難所などでの共同作業が出来ない場合もあります。
 避難所などでは、器具の消毒や交換をする人もいますので、これらを実施できる清潔なスペースを設置するようにします。また、体の状況によって水やたんぱく質、塩分などの制限が必要な人もいますので、食事を提供する際には本人によく確認します。

(5)知的障害のある人のために
①日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常持出袋に入れておきます。服用する際、たとえばオブラートを使用するなどの独自の方法を用いる薬の場合、その旨を防災カードに記載しておきます。

②笛やブザーなど自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。

③身の回り品や食べ物に、特別なこだわりを持っている場合は、そのことを周囲の人たちに理解してもらいます。

④災害時に支援が必要なことを書いた防災カード(付録を参照)や身元、連絡先などが確認できる名札などを、常に携帯するか、衣服などに縫いつけておきます。

⑤実際に行ってみるなど、避難場所を憶えておくよう心掛けます。

支援する方々へ
 知的障害のある人の中には、環境の変化を理解出来ずに気持ちが混乱したり、状況にあわせた行動が出来ない人がいます。また、中には治療や投薬が欠かせない人もいますので、障害の状況に応じた支援を行います。

(6)精神障害のある人のために
①日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常持出袋に入れておきます。

②家族にも、医療機関からの指示や緊急時の対処法等をよく理解しておいてもらいます。

支援する方々へ
 精神障害のある人の中には、心理的に孤立してしまう人もいます。知人や仲間と一緒に生活が出来るよう避難所職員に配慮を求めるようにします。
 また、災害直後よりしばらく経過した後の方が疲労や精神的な不安が強くなってきます。薬を正しく服用しているか、身体や心の調子に何らかの症状が出た場合は、早めにかかりつけの医師に相談するようにします。
 一緒に生活している家族や保護者の苦労を理解し、避難所などで一緒に生活できるよう、思いやりをもって支援しましょう。

(7)難病患者のために
①日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常持出袋に入れておきます。

②特殊な治療食の備えについては、かかりつけの医療機関に相談しておきます。

③家族にも、医療機関からの指示や緊急時の対処法等をよく説明し、理解しておいてもらいます。

支援する方々へ
 難病患者は、外見からは病気であることが分かりにくいことが多く、症状が安定しないという特徴があります。
 避難所などで症状が急変したり、体調の不良を訴えたときは、医療機関にすぐに連絡します。家族などが付き添っている場合は、その指示に従って援助します。

3 災害用伝言ダイヤル

 災害用伝言ダイヤルは、地震などの災害の発生により、被災地への通信が増加し、つながりにくい状況になった場合にNTTにより提供が開始されます。地震など大災害発生時は、安否確認、見舞、問合せなどの電話が爆発的に増加し、電話がつながり難い状況が1日~数日間続きます。先の阪神・淡路大震災では、電話がつながり難い状況が5日間続きました。中越地震では、障害者が被災しているのか、親戚宅などで安全でいるのかなどの情報が家に電話をしても出ないため、行政が状況を把握するために非常に時間を要したという報告もあります。
 災害用伝言ダイヤルは、被災地内の電話番号をメールボックスとして、安否等の情報を音声により伝達するボイスメールです。「171」をダイヤルし、利用ガイダンスに従って、伝言の録音・再生を行ないます。詳しくはNTTにお問い合わせください。

Ⅳ その他の災害

 その他の災害として、雪害や、風水害があります。これらの災害が発生した場合、行政においては必要に応じて概ね次のような措置がとられます。

(1)避難準備情報
 危険予想地域の住民、特に高齢者や幼児を持つ家庭、障害者の方々に対し、避難のための準備と事態の周知を行う必要がある場合など

(2)避難勧告
 当該地域又は土地、建物などに災害が発生するおそれがある場合など

(3)避難指示
 状況がさらに悪化し、避難すべき時機が切迫した場合又は災害が発生し、現場に残留者がある場合など
※行政からの避難の勧告がでたり、危ないと感じたときには、近隣の人と連絡をとりながら早めに避難します。避難の指示が出たときには、必ずその指示に従います。

1 雪害について

(1)雪害の知識
 本県では、雪が多く降る年では、降積雪により様々な被害を受ける場合があります。
 強風と降雪により、視界が狭まったり吹きだまりなどができ、交通障害が起こりやすくなります。また、雪がライフライン施設などに付着して電気・電話などに被害が出ることもありますので、気象情報には十分注意します。
 さらに、気温の高いときには、なだれが起きることがあります。特に、多量の雪が降ったときや、暴風雨やドカ雪の最中や直後、または気温が急上昇したり、大雨が降ったときなど、なだれがおきやすくなります。

(2)雪害への備え
 日ごろから雪害への対策を万全にしておきます。
 いざというときは、正しい情報を得ることに努め、早めの避難を心がけます。

①屋根の雪下ろしへの備えと家屋などの点検
 大雪になり、屋根の雪下ろしが必要になると思われる場合、事前に家族や近隣の人たちと相談しておきます。
 また、雪害などに備えて家屋などの点検を行い、雪の重量に耐えられように補修をしておきます。

②正しい情報を
 大雪が心配されるときは、テレビ、ラジオ、行政の広報などから正しい情報を得ることに努めます。
 被害が起きそうなときには、近隣の人から必ず情報を伝えてもらうように、日ごろからお願いしておきます。

③電気、電話などが止まる
 雪がライフライン施設などに付着して電気・電話などに被害が出ることもあります。私たちの暮らしを支える電気や電話などが、一時的に使えなくなり、日常生活が通常どおり行えなくなる場合もあります。

④危険な場所の点検
 急な斜面や崖地、特に斜面に平行に風が吹くところ、標高の高いところ、植林の少ないところ、河川の堤防のそばなど、家のまわりの危険な場所は、日ごろから気をつけておきます。

2 風水害について

(1)風水害の知識
 風水害は、地震とは違い、事前に予報があり、対策を立てる余裕があるので、私たちの心構え一つで被害を少なくすることができます。
 台風や豪雨などの風水害に備えて、日頃から、家や周囲の点検をして、必要な箇所の修理、補強をして、雨や風に対する万全の対策を講じておきます。
 ただし、災害発生時は家財道具などの保全活動は止めて、早めに避難するようにします。

(2)風水害への備え
①常に家の修繕と補強をしておきます。

・雨どいや側溝は常に水はけをよくしておきます。

・瓦のずれや割れ、トタンのめくれなどは修繕しておきます。

・家のまわりはいつも整理しておきます。また、ブロック塀の修繕についても忘れずにしておきます。

・崩れそうなところは棚や石積みで補強しておきます。

・水路をつくって雨水が崖に浸透しにくくしておきます。

②テレビ、ラジオで情報を聞き、次のように対処します。

・ベランダの植木鉢、物干しざおなど飛ばされやすいものは室内へ入れておきます。

・避難袋を身近な所において、いつでも避難できるようにしておきます。

・停電に備えてローソクや懐中電灯の用意をしておきます。

・雨水の浸透をできるだけ防ぐよう、ビニールなどで斜面をおおいます。

・河川の増水は早いので、すばやい判断と行動が必要です。

・服装は、活動しやすく、保温性があり、防水効果のあるものにします。

・裸足や長靴は厳禁です。ひもでしめられる運動靴を履きます。

・側溝や用水路に落ちないよう、長い棒などを杖がわりにして、安全を確認しながら歩きます。

・火の始末・戸締りを確実にします。

・家族全員で地域の人と協力して避難するようにします。

Ⅴ 付録

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